ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』読書会やりました。

ナオミ・クラインショック・ドクトリン』読書会やりました。

年をまたがり2回にわたってナオミ・クラインショック・ドクトリン』読書会やりました。参加者は少なかったものの、有意義な議論ができました。ナオミ・クラインが自著について語った日本語字幕付き動画を見たりもしました。

本書の強調点のひとつに、災害資本主義(惨事便乗型資本主義)が災害に乗じて発動する過激な市場主義政策としての「ショック・ドクトリン」には、社会主義者労働組合活動家、人権活動家など様々な批判勢力への弾圧が必然的にともない、それ自体がもうひとつの「ショック療法」だということがあります。そこで、社会運動への弾圧問題に詳しい参加者から、2011年3月11日後の日本における弾圧状況を報告してもらいましたが、それによれば、3.11後の弾圧は、2000年代に入ってから続いている批判勢力への弾圧の延長であり、あえて災害時に起こったとりわけ激烈な弾圧を探せば関東大震災にまで遡る必要があるのでは、ということでした。

本書への批判的意見としては、結論が一気に楽観的な議論に流れているとの声もありました。確かに、新自由主義反革命によって、権力を回復した富裕層による支配体制をいかにして変革できるのか、その変革の契機や主体、物質的条件についての分析には見るものが少ないように私にも感じられました。

他にも注意すべき点はいろいろありそうですが、この簡単な報告では次の一点だけ加えることにします。本書における「コーポラティズム(corporatism)」という用語についてです。本書を読むと、コーポラティスムと言えば、イタリアのムソリーニ政権に始まる、政府、企業、労働組合の三つの権力組織が同盟を組み、ナショナリズムの名において秩序を維持するために協調する警察国家体制のことであり、チリのピノチェト政権やジョージ・W・ブッシュ政権のアメリカに典型的に見られるものというように読めます。しかし、これでは、1970年代以降にスウェーデンなどヨーロッパにネオ・コーポラティズムが生まれ、その後、新自由主義反革命によってそのネオ・コーポラティズムが衰退したという諸事実が全く無視されていることになります。2000年代ブッシュ政権アメリカを「コーポラティズム国家」と呼ぶにいたっては、大企業による政府の支配を批判的に名指す「大企業中心主義」といった程度のジャーナリスティックな意味でこの言葉を使っていることになります。クラインは、コーポラティズムという言葉を、政治学の概念とジャーナリスティックな用語という二つの明確に区別すべきものを混同して使っており、この言葉が出て来るところの記述を読むとかなり当惑させられます。

やや欠点を強調する書き方になってしまいましたが、全体としてはデイヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義 その歴史的展開と現在』(作品社、2007年)などと並ぶ新自由主義の批判的/歴史的理解に資する好著であることは間違いありません。言葉遊びが多い著者ですが、日本語訳でも多少はそれを楽しむことができます。訳文はとても読みやすく、ありがたいです。

この読書会を踏まえて、次には、2月19日(日)にTPPに関する読書会を計画中です。詳細は追ってお知らせします。

また、関連して、私も組合員の茨城不安定労働組合主催で以下の企画があります。

(以下、茨城不安定労働組合ブログより転載:http://d.hatena.ne.jp/godzilla08/
=====================================
反弾圧学習会 団体交渉権を奪わせない! がくろう神奈川弾圧を考える

  十一年十月二十五日、神奈川県警公安三課によっておこなわれた学校事務職員労働組合神奈川の組合員四名に対する令状逮捕は起訴も出来ずに早期釈放、四名は起訴猶予となった。一年半前の校長との団体交渉を強要として犯罪化しようという警察の試みは頓挫した。

けれども誰でも容易に想像できるように「逮捕」の影響は大きい。裁判にならなくとも「逮捕」だけで個人の生活は破壊されるし、運動もその対応に大きく力をさかれる。

今回の弾圧が公務員バッシングの一環だということはわかりやすい。また、労組メンバーは反天皇制やG20といった課題にも積極的に取り組んでおり、地域の運動潰しという側面もあるだろう。そして、何よりも団体交渉権という労働組合の根本的な権利に対する真正面からの攻撃である。

国策である原子力発電への抗議デモが警察の弾圧を受け続けている中に起きた今回のがくろう神奈川への弾圧は、当然にも社会運動・労働運動は警察の弾圧をまねくというメッセージを放つ。もちろんそれは不当な攻撃だ。こんな何重もの不当を許すわけにはいかない。まずはがくろう神奈川の方を招いて話を聞くところから始めたい。

日時 1月22日(日)14時〜16時

会場 吾妻交流センター(旧吾妻公民館)小会議室 (つくばエクスプレスつくば駅徒歩5分 つくばセンタービル4階)

参加費 500円

お話 田中伸一郎(学校事務職員労働組合神奈川 組合員)

主催 茨城不安定労働組合

連絡先 090−8441−1457(加藤)